君が僕を どうして空は青いの?
- 作者: 中里十,山田あこ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/07/17
- メディア: 文庫
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■ ストーリー
昔はどこの商店街にもいたらしい商売繁盛の神様“恵まれさん”が、私の町のショッピングセンターに、復活。
たいていはおばあさんだったのだけれど、今度の“恵まれさん”はなんと中学三年生。しかも、“執事”をともなって私のクラスに転入してきた!
お金に一切触れてはいけない決まりだという“恵まれさん”。
日々の生活をサポートするのが“執事”だなんて言っている。お金に触れないなんて、そんなのムリ! 本当はどうなの?
なぜ、そんな野生生物みたいな微笑みなの? 気になる・・・気になる・・・・・・好きになる?
■ なんて
あらすじが背表紙に書いてありますが、ただのガールミーツガール小説として買うと物凄く痛い目を見る作品。
表紙イラストも絶対に詐欺だと思う。
さらに、サブタイトルの『どうして空は青いの?』のところとか見てるとどうみてもただの青春小説にしか見えないんですよね。
たった200ページしかない作品ですが、その中身はあまりに濃密と言えると思います。
ある意味で、勿体無いことをしてるなぁ。『ぷりるん』といい、これといい。
全く、見た目で判断できない作品が出てくるのはなかなか困りものですね。ただ、面白いとも思いますが。
■ この作品は
主な登場人物はたったの3人だけです。
語り手で主人公である橘淳子。
不思議なヒロインである“恵まれさん”こと絵藤真名。
そして彼女の“執事”を自称する、美青年のような美貌を持った少女、長谷川縁。
それぞれがそれぞれで一癖も二癖もある人物なので、どうせだから個々で紹介いたします。
■ 橘淳子
登場人物の中ではまともなほう。
基本的におばあさんがなる“恵まれさん”になったこともあったが、それ以上に不思議な雰囲気を発する絵藤真名に惹かれていく。
自分が何に興味を持ったことにも気付かず。
■ 絵藤真名
登場人物の中ではまともとは言えない。
どういう人物なのかと訊かれると、絶対に一言では言い表せないと思います。
不思議ちゃんの一言で済ませられればどんなに楽なのだろうと思ったり。
■ 長谷川縁
登場人物の中で一番達観してるほう。
冷静で、平静で、そして彼女の傍に在る。
彼女は何を思うのか。
■ とにかく
『読んでくれ、話はそれからだ』としか言いようがない作品だと思います。
何せ、絵藤真名の感性がぶっとび過ぎて初見では正直『何いってんコイツ?』にならざるを得ないからです。
会話例を見ればそれがなんとなくわかると思います。
「どうして空は青いの?」
「君は誰?」
・・・・・・別に間を省略したわけではありません。橘淳子のこの問いに対して絵藤真名が答えた言葉がこれなのです。
どうみても噛み合ってませんよね。
『質問に質問で返すことは感心しません』と言いたいくらいだ。
さらには、
「どうして人を殺してはいけないの?」
「君は誰かを殺したいの?」
「いや別に誰も」
「そう、よかった」
「私の質問に答えてよ」
「答えは、この床」
真名は教室の床を指差した。
「なに、なんのこと?」
「その答えも、この床」
真名は再び教室の床を指差した。
これは長谷川縁が絵藤真名に出逢って間もないときにした会話です。
ちなみに、真名は大真面目に答えたそうな。わかるかっ!(ツッコミ)
■ 紫色のクオリアに通ずる所があるんですが
自分でしか理解できない感性はどうしようもないんですよね。
誰しも、絶対に認めたくない事実というものはあるものです。
真名はただ、それを認めたくないだけなのです。
「私は確信していたよ。きっと真名は困った顔で、『それがどうしたの?』とか言うだろうって。いや、案外『知らない』と答えるかもしれない。こんな答えでも私は黙るしかないからね。
なぜかっって訊かれても、難しいね。この世には痛覚を持たない、『痛い』という感覚を持たないで生まれてくる人がいるらしい。そんな人にどうやって『痛い』という感覚をわかってもらう? 私のこれも同じことだ。他人のことをなにもかもわかるべきだという思想は、とてつもなく傲慢だと思わないか? 痛覚を持たずに生まれてきた人が、『人の痛みがわかる人になりましょう』なんてお題目を聞かされたときには、どんな気持ちがするのだろうね? それこそ『人の痛みをわかる』べきだよ。
『どうして空は青いの?』。この問いに、真名はどう答えたと思う?」
これは、長谷川縁が絵藤真名にした問いです。
彼女は、どう答えたと思いますか?
認めたくない事実に対して、彼女はどうしたと思いますか?
■ 評価としては
あまりに理解が難しかったために評価不能です。うん、誰かわかりやすく解読してケロ。
私なら、『どうして空が青いの?』という質問はきっとこう答えるでしょうね。
『何色でも、そこに空があればそれでいい』
・・・・・・ちょっと気障すぎましたかね?