まさかまさかのリアルツイッタードラマ
■ これは
ツイッター*1で起きたんです。リア充大爆発しろという出来事が。
私だけのせいじゃないんです、ええ。
だからノリで文章化しちゃったんです。後悔はしていません。
ところどころ文章に綻びがあったとしても見なかったことにしてあげて下さい。
■ 最初に言っておきますが
この物語はだいたいあってますが実際のところはほとんど
フィクション
です。
くれぐれも細かい所に突っ込みをしてはいけませんよ。
■ 目録
企画:とあるクラスタ*2の恋愛目録
タイトル:電波男と青春女
作家:トランペッター
詩:ちょこ
監修・編集・最終調整:SHI-NO
スペシャルサンクス:ついったらーの皆様
制作時間:30時間ぐらい(多分)
■ 登場人物
電波男……主人公。本当は電波じゃないけど元ネタのせいでこうなった。私のせいじゃない。
青春女……ヒロイン。後は上に同じ。
カカオ……最初は電波男のかませ犬のハズだったが気付けばいい人に。よかったですね!
虎……何故カカオさんの厄(役)が回ってきた不運な人。
でお送りします。
というわけで色んな意味で拙い物語の始まり始まり〜♪
長いかもしれないのでそこら辺は注意。
■ プロローグ
一言の呟きがどこにでも届く世界
その重なりはどこまで続く
これはその一つの交わり
きっとそれはどこにでも転がっている
■ 11月
あるところにラノベ好きな男女がいた。仮に「電波男」と「青春女」と呼ぼう。
電波男はある日『ツイッター』というものを始めた。きっかけは自分が大好きなライトノベル作家・川上稔さんがツイッターをやっていたからである。140字制限での『つぶやき』を利用した様々な活用法を知り、電波男はツイッターを始めたその日から、その面白さに引き込まれていった。
青春女は『読書メーター』というものをやっていた。それは自分の読んだ本を登録して管理するwebサイトである。青春女がいつものように読書メーターを更新しようとパソコンを立ち上げると、一件の新着メールが入っていた。その内容は『青春男があなたをお気に入りに登録しました』というものだった。
さっそく青春女はその電波男の読書メーターを確認する。すると、読んでいる本が似通っている。川上稔が大好きだということも、自分と共通しているということもあり、青春女も電波男をお気に入りに登録した。
電波男が読書メーターに掲載しているプロフィールを読んでみると、『ツイッター』をやっているのを知った。最近テレビでも騒がれているものである。
その場では興味がなかったが、数日後、電波男のURLからツイッターというものを覗いてみることにした。見る限り自分もやっているブログとはまた違った面白さがありそうである。そこから青春女は、ツイッターというものに興味を持ち、自分もやってみようと思い立った。
電波男はツイッターを始めてからしばらくすると、『青春女』というH.N.の人物が自分をフォロー*3してきた。プロフィールを確認すると、先日読書メーターで自分がお気に入りに登録した人物だ。
しかし、それからしばらくは電波男も青春女も、接触をすることがなかった。生活リズムが合わないというのもある。お互いタイムライン*4で見かけるのは一日に数度あればいい方で、たまに見かけても特に気になるつぶやきではなく、日常の一コマを切り取ったものだった。
■ 間奏
始まり
それは見えそうで見えない所で
気付かれるのを
待っている
■ 12月
二人が初めて会話をしたのはなんとクリスマスの夜だった。クリスマスだからといってロマンチックなことなどではない。むしろ外でみんなが楽しんでいるのを横目に二人とも自分の部屋に引き篭っていた。
電波男はその時も自室で本を読んでいた。タイトルは川上稔作品の一つ『終わりのクロニクル』。人を殴り殺すことが出来そうな分厚さの本である。
読んでいる途中で一息つくために電波男はパソコンを立ち上げた。ツイッターを開くと今読んでいる本についてつぶやいた。
すると間もなく一件のリプライ*5が飛んできた。相手は青春女だった。
内容は『私もカワカミン*6ですよー、川上作品いいですよね! カワカミン同士よろしくお願いします』というもの。電波男もすぐにリプライを返した『そういえばプロフィールにも書いてありましたね。こちらこそよろしくですよ』それが二人が初めて繋がりを感じた瞬間だった。
それからしばらく、電波男は読書をするのも忘れて、お互いが好きなラノベや、他愛のない雑談などをして楽しい一時を過ごした。
その時から電波男の心の中には青春女に対する微かな関心が生まれる。これまでも何人かほかの人と会話をしたことがあったが、青春女とした会話は、短い時間の中でも特に楽しいものだったからだ。
相変わらずお互いツイッターをしている時間帯は中々合わなかったが、それでも最初にツイッターを始めた頃よりは、確実に青春女と会話をする機会は増えていった。
■ 間奏
情報と本の海で
私と貴方は触れ合った
その中で楽しそうに振舞う貴方は
少し優しくて暖かな存在でした
■ 1月
それから電波男はタイムラインで青春女を見る度にリプライをとばした。無意識のうちにその存在を追いかけていたのかもしれない。年が明けてからは、その傾向がますます顕著になった。
いや、無意識というレベルではない。電波男ははっきりと青春女の存在を探すようになっていた。そうやってコミュニケーションを重ねる度に電波男の心の中では、青春女の存在が大きくなっていった。クリスマスの夜に初めて会話をしてから、まだ1カ月もたっていないが、電波男の中にある青春女の存在は徐々に特別なものへと変化していった。『もっと彼女との関係を深めたい』そう電波男が思うのは必然だっただろう。
青春女はツイッターを始めたのはいいけれど、最初はツイッターというものをよくわかっていなかった。
『つぶやく』といっても、他人のつぶやきは見ても、面白さがよくわからなかったし、はじめのうちは会話できるなんてことも全く知らなかった。なので、青春女がツイッターを始めた最初のころは、読んだ本の感想を書く程度だった。
それからしばらくすると、他人のつぶやきに対して返信をする機能があるということを知った。相手に送るよりも、青春女がつぶやいたことに対して反応が来ることが多かった。青春女も自分に来たつぶやきに対して、返信を繰り返しているうちに、徐々にツイッターの中でのコミュニティを築いていった。
その中でもよくやり取りをしたのは電波男だった。ツイッターを始めたのも電波男の読書メーターがきっかけだったし、始めの頃はあまりタイムラインでも見かけることがなかったが、クリスマスの夜にたまたま会話をする機会があった。電波男は自分が読む本の趣味が合うということもあって会話が弾んだ。
その一件以来、青春女の心の中には電波男が『ツイッターで仲が良い人』として記憶された。
それ以降も電波男とはラノベの話だけでなく、お互い困ったり軽く悩んだ時に相談したりと、会話を重ねていった。
■ 間奏
あの日僕たちは
仮面を取って
素顔で見つめ合った
幾つも積み重ねた言葉たちが
僕たちの心を彩った
■ 2月
2月に入り、電波男が通う大学が休みに入った。電波男がツイッターをする時間が長くなるのは必然だっただろう。
電波男はそれこそ寝る間も惜しんでツイッターをする生活になっていった。全ては青春女と会話がしたいという一心からである。
そんなある日電波男がいつものようにパソコンを立ち上げると、ツイッターではなく、スカイプ*7のメッセージが届いていた。送り主の名前は『カカオ』。彼もラノベを通じてツイッター上で仲良くなったうちの一人である。カカオとはツイッターだけではなく、しばしばこうしてスカイプでチャットをする仲だった。
その日もスカイプでラノベの話で盛り上がっていたのだが、別の人もスカイプに呼んで一緒にチャットをしようと言う流れになった。『だれかラノベ好きな人知ってる?』というカカオの問いに対し、電波男が真っ先に思い浮かべたのは青春女だった。
『心当たりあるから誘ってみるよ』そういって、電波男はちょうどタイムラインにいた青春女をスカイプへと誘ってみた。彼女は最初渋っていたのだが、それでも電波男が何度か誘いをかけると、最終的にはOKを出してくれた。
青春女だけでなく、カカオがそのほかにも何人かラノベ好きな人を集めてきて、最終的には10人ほどでチャットをするようになった。
『思ったより人数集まったけど大丈夫かなぁ』電波男はそう危惧したのだが、電波男の心配とは裏腹に、そのチャットはとても楽しかった。みんなノリがよく、親切で、愉快で何より面白い人たちばかりだったのだ。夜にチャットを始めて朝を迎えるなんてこともしばしばだったし、率先して参加したのは電波男だった。
しかし、グループでするチャットは確かに楽しかったのだが、電波男が密かに気にしているのはやはり青春女のことだった。
そのチャットは毎晩のように繰り広げられ、初めてグループでチャットが開かれてから数日後には、ボイスチャットも使われるようになっていた。だが青春女だけは自前の恥ずかしがり屋精神を発揮してかたくなにボイスチャットには参加しようとせず、文字だけでチャットに参加していた。
電波男はなんとかして青春女の声を聞きたかった。だがここで執拗に追いたてれば、自分が嫌われるのは目に見えている。そこで電波男はカカオを利用することにした。カカオをおだてあげ、誘導し、扇動し、結果『カカオのゴリ押し』という形によって、青春女をボイスチャットに参加させることに成功したのだ。せこい。
そして初めて聞いた彼女の声は天使だった。
誰もが『天使ちゃんマジ天使』という書きこみをするほどだった。
初めての会話に参加する青春女は実際のところ天使というよりも巣穴から外の様子を伺う小動物的な感じに満ちていたが、そこがまたなんとも可愛らしく、会話に参加していた野郎どものテンションはうなぎ昇りだった。
もちろん電波男も例外ではなく、むしろもっともテンションが上がったのが電波男だった。うっかり手元にあったお酒の瓶を倒してしまうほどの興奮っぷりであった。
最初の方こそ、オドオドしていた青春女だったが、通話を重ねるうちに楽しく会話できるようになってきた。青春女がボイスチャットに参加するようになり、その場はますます盛り上がりを見せていた。
電波男は1日中パソコンに張り付くようになり、24時間ボイスチャットをするというアホなことまでしてしまうほどだった。
会話をするだけで電波男は楽しかったが、不満もあった。青春女はそのキャラクター性からスカイプのメンバーだけでなくツイッターでも高いアイドル性をもっており、青春女と確かに仲はよかったが、それは『青春女と仲がいい内の一人』であり、決して自分一人だけが、特別な仲というわけではないということだった。
『今度みんなで一緒に遊ぼうよ』
電波男は勇気を振り絞って、そう書き込みをしてみた。
するとカカオをはじめ、関東近郊に住む人たちは乗り気になり、最終的に2月14日に集まることになった。
青春女にも参加を呼び掛けてみたが、やはり会うことには抵抗があったのか、メルアドは公開していたが、参加するかどうかは結局明言しないままだった。
そしてオフ会当日。
電波男が前日からメールで説得していたのが功を奏し、青春女とついに対面した。
実際に会った青春女は想像以上に天使だった。
比喩ではない。ツイッターのアイコンがそのまま抜け出してきたような可愛らしい姿が電波男の目の前にあった。
やはり実際に会って話したりするのは緊張するのか、青春女はネットで話すより口数が少なかったが、それでも電波男は満足だった。
しかも、オフ会をした日がたまたまバレンタインデーということもあり、青春女はわざわざチョコレートまで用意してくれていたのだ。
そんなこんなで楽しい一日はあっという間に過ぎ去り、名残惜しみながらも駅で解散をした。
乗る電車は違ったものの、電波男と青春女は帰る方向が同じだったため、二人で駅のホームに並び終電を待っていた。
「今日はどうでした?」という電波男の問いかけに対し、「思っていたよりも楽しめました。最初はやっぱり緊張しましたけど」そう答える青春女。
それから今日の感想や、実際に会ったお互いの印象についてなど、電車が来るまで数分の間だけだったが、電波男は青春女と二人きりで話しをすることができた。
そして青春女が乗る電車が先に到着し、彼女が電車に乗り込む直前に電波男はチョコのお礼を言うと、『今度またみんなで遊べたらいいね』と青春女が言った。
それからしばらくは、今までのようにツイッターとスカイプで会話をする生活に戻っていた。
ただ、一度会って信頼度が上がったのか、青春女とはただの雑談だけではなく、電波男が落ち込んだ時などに、相談に乗ってもらったりもした。電波男の中では青春女への想いが少しずつ大きくなっていったのだった。
■ 間奏
目の前に舞い降りた君は
まるで天使のようで
でも、震えていたね
どうか怯えないで欲しい
君の震えを取ってあげたい、と
そう思ったんだ
■ 3月
3月に入り、再びチャンスが訪れた。スカイプのメンバーの一人が、ビッグサイトで行われるイベントに参加するため、遠方から東京までくるというのである。
彼は前回のオフ会に参加できなかったということもあり、3月14日に再びオフ会をすることが決定した。
3月14日といえば、世間的に言うホワイトデーである。前回のオフ会がバレンタインデーということもあって、電波男にとってはそのお礼という名目も利用することが出来た。
商業目的で作られたイベントデーだろうと知ったことではない。自分に都合がよければなんだっていいのだ。
電波男はオフ会の前日中々眠れなかった。次の日が楽しみということもある。しかし彼の胸中には色々な想いが駆け巡っていた。
そして電波男は一つの重大な決意をした。何度も自問自答を繰り返し、その決意が揺らがないかどうか確認した。そしてその想いが固く決まったのをしっかりと胸に刻みつけ、その決意を胸に抱いて眠りに就いた。
そしてオフ会当日。
集合場所には前回のメンバーの他に、初めて会う人が一名加わっていた。彼の名前は「虎」。ほぼ同世代といえるメンバーの中では、唯一『大人』と呼べる人である。
彼は午前中に別の場所でイベントに参加している。そのため今回のオフ会には強行軍で参加しているということもあり、若干の疲れは見えたが、初対面だからといって別段緊張するわけでもなく、みんなとにこやかに話していた。
青春女も前回はかなり緊張していたにも関わらず、虎と話す時にはそんな様子はなく、むしろ電波男と話すよりもリラックスしているようにみえた。
適度に遊んだ後、夜はお酒を飲むことになった。そこでの中心は自然と初参加の虎の話題になる。午前中のイベントや、地方の話。それに虎もラノベ好きということがあり、青春女とはその話題でかなり盛り上がっていた。
電波男はなんとかして青春女と二人だけで話をする機会を伺っていたが、そんな隙は微塵もなく、青春女は『用事がある』と言って飲み会の途中で先に帰ってしまった。
突然の青春女の帰宅に呆然としていると、虎が思い出したかのように『青春女さんのこと誰か駅まででも送ってあげればよかったね』などと言ったのを聞いて、(それをもっと早く言えよ!)と電波男は心の中で叫んだが後の祭りである。むしろ先に気付け。
そうして電波男は青春女になんのアクションも起こせないまま、この日は解散になってしまった。
昨日の決意は一体何だったのだろうか。電波男は意志の弱い自分に腹が立った。
自分の気持ち、現在の状況、今までの流れ、これからの未来。
カカオは快く相談にのってくれた。一つ一つの話をじっくりと聞き、電波男が何をしたいのか、どうすればいいのか、的確にアドバイスをしたうえで、最後にこう言った。
『当たって砕けろ』と。
実のところ、欲しかったのはその一言だったのかもしれない。
自分の背中を押してくれる言葉が。
3月末日。電波男は青春女にメールを送った。
『明日一緒に遊ばない?』
返事が来るまで、何をやっても集中することができず、机の上に置いた携帯電話をじっと見つめながら返信を待っていた
そういう時ほど、時間というものは、遅く感じられるものである。その待ってる間にも様々な考えが渦を巻き、心臓の音がやけに大きく感じられた。
その携帯電話が音を出したのは、それから数分後だった。電波男は携帯へと飛びつき、早くメールを見たいという思いと、絶対見たくないと思いがごちゃ混ぜになった心境で、震える指で恐る恐るメールを開いた。
電波男の緊張とは裏腹に、メールには『いいですよー♪ 私も暇ですし!』という感じの軽快な文章が目に飛び込んできた。
そのメールを見て、電波男は心の中で喝采を挙げた。いや、実際に大きな声を出していたのだろう。隣の部屋から、「うるさい!」と、妹に怒られてしまった。だがそんなことはどうでもいい。最初の段階はクリアしたのだ。
それから他愛ない雑談も混ぜながら遊ぶ場所と時間を決めた。
『そういえば、あとは誰が来るの?』
というメールが来たとき、電波男の心臓が跳ね上がった。ここが計画の第2段階である。
『あとは、カカオさんが来るよ。急なことだから、みんなに送ったんだけど、多分3人で遊ぶことになりそう。大丈夫かな?』
ここが正念場である。ここで断られたら、全ての計画は水の泡だ。
3人しかいないと聞いて、案の定、青春女は腰が引けた様子だったが、彼女がゴリ押しに弱いということは過去の出来事で経験済みだ。
多少強引にでも、無理やり参加することにしてしまえば、彼女は人がいいから参加するはずである。
『後から他の人も参加できるかもしれない』などという嘘も交えながら説得した結果、最終的に青春女も次の日に遊ぶことを承諾した。
これで準備は整った。青春女とのメールが終わった後に、カカオと何通かメールのやり取りをして計画の最終調整を行った。あとは明日を待つばかりである。
■ 間奏
哀れな臆病者の
ちっぽけな願いを、受け入れてくれないか?
一生懸命
手を振ったよ
声に出したよ
だから――
■ 4月
そして4月1日。
待ち合わせ場所に1時間前から待機していた電波男のところへ、青春女が現れた。集合時間の5分前である。
『電波さん早いね』なんてお決まりの会話をしながら、二人はカカオのことを待っていた。
約束の時間を10分ほど回ったころ、電波男の携帯に一通のメールが届いた。送り主はカカオである。ちょうどカカオさんが来ないという話をしていたころだった。メールの内容は『急用が出来たので、今日はいけない。ゴメン』というものだった。
電波男がカカオから来たメールを青春女に見せた。『カカオさん来れないのか……』とつぶやいて、何やら考え込む青春女。おそらく、電波男と二人だけで遊ぶかどうか考えているのだろう。
ここで解散してしまっては、なんの意味もなくなってしまう。
「せっかくここまで来たんだから、ちょっと遊んで行こうよ。後で相談したいこともあるし……」
と言う電波男。それでも青春女は若干ためらっていたようだが、
「う〜ん。そうだね、せっかく来たんだし。買いたいものもあるし」
と言って、最終的に青春女は二人で遊ぶことにOKを出した。
電波男は小躍りしたいぐらいの気持ちを抑えながら、青春女と一緒に歩き出した。『カカオさんありがとう』と心の中で、感謝の念を唱えながら。
カカオはメールが送信されたことを確認すると、携帯を閉じてベッドの上に放り投げた。カカオが今いるのは自分の部屋である。Tシャツにジャージというラフな服装のままである。もちろん『急用』なんてものはなく、そもそも始めからオフ会に参加なんてする予定もない。
椅子に座って大きく伸びをすると、一組の男女に想いを馳せた。
「ま、あとはうまくやれよお二人さん」
そう一人ごちると、PCを立ち上げヘッドホンを装着した。
正直なところ青春女は迷っていた。もちろんこのまま二人だけで遊びにいくということについてである。普段から何度も話しているし、実際に会ったこともある。しかし『男性と二人きり』で遊びにいくというのはやはり少し抵抗があった。
それでも電波男に「せっかく来たんだし……」と言われて、自分に納得させた。なんとなく電波男の様子がいつもと違うような気もしたが、おそらく彼も二人しかいないということに対して戸惑っているのだろう。
二人だけで行動するとやはり若干会話のテンポなどがぎこちなくなってしまったが、よく考えてみたらスカイプ上でだって二人きりで話したこともある。それと似たようなものだ。青春女は自分にそう言い聞かせた。
それから本屋に行き、好きな本のことについて喋るうちにお互い固さが取れていき、ようやくいつもの調子を取り戻してきた。
その後は、喫茶店でオムライスを食べ、服や雑貨を眺め、お互いの趣味に関する店をいくつか回って楽しんだ。
はたから見たらデート以外の何物でもなかったが、あくまでもこれは『オフ会』だと思っていた。少なくとも青春女にとってはそうだった。
そして夜。
「そろそろ解散する?」という青春女の問いかけに対し、「相談あるからちょっとお酒飲みながら話そうよ」という電波男。
そうして電波男が前もって調べておいたバーへと二人は足を運んだ。
カウンターへと並んで座り、軽いつまみとお酒を飲みながら今日の出来事や、ツイッターでの話題等をして雑談をした。
30分ほどした後だろうか。お酒もいい感じに回ってきたところで、青春女が切りだした。
「それで相談ってなに?」
「相談っていうのは、えっと……」
「どうしたんです? まさか人生相談か何かですか?」
「人生相談といえばそうなんだけど……」
電波男はそう言って、前髪を触ったり、無駄に携帯をパカパカさせたりと、明らかに挙動不審な様子である。
「歯切れが悪いですねぇ。どうしたんですか? もしかしてお腹痛いとか?」
などと、冗談を飛ばす青春女の両手を、電波男がいきなり握りしめて言った。
「リアルでもフォローさせてください!」
青春女:(゚Д゚)
「えぇ〜っと……どういうこと? まさか私と付き合いたいとか? 冗談だよね?」
「いや、冗談じゃこんなこと言いませんから! ずっと青春女さんのことが好きだったんです!」
「いやいやいやいや」
固まる青春女。目の前には顔を真っ赤にした電波男の顔が。両手から伝わる彼の体温は火傷しそうな程熱い。どうやら冗談ではなさそうである。
『告白された』という事実が青春女の中に浸透していくにつれて、青春女の体温も急激に上昇していった。お酒を飲んで血流がよくなっているという事実を差し引いても、顔が赤い。『火が出そう』という比喩がようやくわかった気がする。
「なんで私と付き合いたいの?」という青春女に対し、電波男は「俺のハートがあなたにバーニングだからです!」
もはや意味不明である。おそらく電波男本人も支離滅裂なのはわかっているのだろう。そのグチャグチャになった心の中で青春女に想いを伝えたいという気持ちだけで言葉を紡いでいた。
電波男の必死な様子をしばらく見ていた青春女だったが、
「……いいよ」
と、青春女はポツリとそうつぶやいた。
「え?」
「だから、いいよ。あなたと付き合っても」
「ほ、本当にいいの?」
「なんでそこで疑問形になるのかなぁ。女に同じことを何度も言わせる男は格好わるいよ?」
青春女の顔はまだ赤かったが、半信半疑の青春男に向かってはっきりと『付き合う』と言ったのだ。
「……それじゃあ、これからよろしくお願いします」
「こちらこそ」
青春女がそう言った瞬間、店内が爆発した。
周囲の客や店の従業員たちが大きな歓声を上げたのだ。
電波男と青春女は自分達以外の状況が全く見えていなかったのだが、実のところかなり大きな声で喋っていたので周囲に筒抜けだったのである。
拍手をするもの。口笛を吹くもの。大声で祝福するもの。店全体が、新しいカップルの誕生の瞬間に沸き立っていた。
顔を真っ赤にして俯く二人。
店を出て、二人は駅へと向かった。
お互いしばらくは無言だったが、二人の両手は先ほどよりもしっかり握られていたのだった。
関東とはいえ4月の夜はまだ寒かったが、適度に体を回るアルコールと、何よりお互いの両手から伝わってくる体温があり、寒さなど微塵も感じなかった。むしろ少し冷やしてほしい程、二人並んで歩く姿は初々しさとアツアツさで満ち溢れており、体だけでなく心の中まで一足早い春が訪れていたのであったこんちくしょう。
駅が見えてくるころ、ようやく電波男が口を開いた。
「なんでOKしてくれたの?」
実のところ、電波男はそれがずっと気になっていたのだった。自分で告白しておいてなんだが、まさか本気でOKされると思わなかった。あまりにもいきなりな話だったし、出会ってからまだ4カ月も経っていない、しかも実際に会うのはこれで3回目だ。もちろん自分の気持ちは本気だし、今の青春女の態度を見ても、まさか冗談ではないだろう。
「そうね……エイプリルフールだからかな?」
「……え?」
言葉を失う電波男。まさか本当に冗談だったんじゃ……。そう思った時だった。
「冗談ですよ。そう、今のが『エイプリルフール』ってやつかな?」
そう言って、ふふふ、と青春女は笑った。
「私も最初は『エイプリルフールかな』って思いましたけどね。電波さんの必死な顔を見て『嘘じゃないんだな』っていうのがわかりました」
そう言うと青春女は足を止めて、電波男の方へと向き直った。いつの間にか駅の入口へと着いていた。
「それでね。電波さんが一生懸命になって、色々言ってくれるのを聞いて、『あぁ、この人は本気で私のことが好きなんだ』っていうのが伝わってきたので、こんなダメな私のことでも好きになってくれるんだって思ったんです。それが理由ですね。」
そう頬を染めながら喋る彼女の顔は本当に天使の様だった。電波男はそんな青春女の顔を呆けたように眺めていた。
『ちょっと、ちゃんと聞いてます? まったく付き合って早々失礼な人ですね』そう言って軽く眉をひそめる青春女の顔も可愛かったのだが、電波男はそのことは口に出さなかった。
電波男は一つ咳払いをすると、
「それじゃあ、改めて、よろしくお願いします」
そう言って、青春女の前に右手を差し出した。
青春女は無言でその右手を掴むとグイッと自分の方に引き寄せると、電波男の頬に自分の唇を軽く押しつけた。
「男ならこれぐらいしてください。今回は私からということでほっぺたです! それじゃあ!」
そう言って微笑むと、青春女は駅の中へと消えて行った。
「よっしゃあああああああああああああああああああああああああ!!!」
電波男の雄たけびが4月の夜空へと響き渡った。
――全ての人に春が訪れますように。
■ エピローグ
エピローグ? ナニソレ美味しいの?
というわけでエピローグと言うより反省会です。
ネタになってる人たちはほとんど大学生なのに作成したのが、社会人の人たちとか時間捻出とネタ出しでストレスがマッハです。
所詮素人が作ったものなので拙い作品でしたでしょうがお楽しみ頂けたでしょうか?
またいつかどこかでいい出会いがあるといいですね!(遠い目)