ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。
ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。 (一迅社文庫)
- 作者: 朱門優,鍋島テツヒロ
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2008/05/20
- メディア: 文庫
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■ ストーリー
十五夜草町というちょっと不思議な名前の町があった。
そこに住む日輪(たちもりりん)はある特殊な体質に悩まされていた。
先祖より受け継がれたその体質は、彼の思いや考え方を知らず閉塞的に追いやっていた。
そんな彼には幼馴染の穂積之宮いちこという色んな意味で有名な少女がいる。
何故彼女が有名なのかというと、彼女がとても美人だということもあるのだが、それ以上に彼女がいつ如何なるときも見につけている巫女装束に尽きるだろう。
彼女の実家は神社なのだが、それでも外出するときに常に巫女装束でいることは異常といえるだろう。
そんな彼女に輪はなんとペット扱いという散々な扱いをされていて、しかし彼自身それを受けて入れているという不可思議な関係を保っていた。
そんなある日、輪はいちこになんとお見合いを申し込まれる。
しかし、そのお見合いは普通のお見合いとは違うこの町伝統行事のお見合いだったのだ。
■ うん
エロゲーという観点から見るかどうかはともかくとして、この作品は凄いと思います。
驚くほどに無駄がない上に、複線の回収の仕方が上手すぎる。というか何気ない所に複線を置くのが上手すぎる。滅茶苦茶感心させられましたね。
■ あと
登場人物こそ少ないですが、皆にそれぞれの魅力があって面白いですね。
人の思いを汲み取れない少年の輪。
見事なツンデレを体現するいちこ。
傍若無人で無垢なアネモイ。
輪をわんちゃん扱いするいちこに、いちこすらもわんちゃん扱いにするアネモイ。
アネモイと輪たちの出会ったシーンだけ見ても笑えます。
「ちょっと、わんちゃん! なんなんですのこの娘っ!?」
「わんちゃん? きさまのことか?」(注:ここでのわんちゃんは輪のことを指しています)
「まあ、そうね」
「ふむ、あだ名はともだちの証だな。では、きさまはなんというです?」
「ふふっ、よくお尋ねくださいました。わたくしこそが、この穂積之宮神社の――」(注:定型文で略されてます)
「いちこ、という名前から察するに“いち”は数字の“壱”」
「え? あ、いえ、字が違いま」
「“壱”は確か、“ワン”ともいう」
「え、ええ。ですが、いちの部分に当てるべき漢字は」
「つまりきさまは、『わんこ』です」
「人の話を聞いてくださいませっ!!」
会話以外省略してますが、これだけでもアネモイの凄さがわかると思います。
輪をいじるいちこは完全にドSですが、いちこすらもいじるアネモイは無慈悲なドSと言わざるを得ない。
「わたくしが未熟なのでしょうか。あなたがおっしゃっている意味が皆目わかりませんの」
「きさまは未熟ではないです。がんばっているきさまは、そう、完熟です」
「それはどうも・・・・・・」
「む? いかんです。完熟だと後は腐り落ちていくだけということになってしまうのです」
「・・・・・・・・・・・・」
無自覚に貶すアネモイはこの世界最強のキャラクターと言えそうです。
■ この作品を読む上で
一番重要なのは、あんまり深く考えずに読むことだと思います。
そうすればいい意味で裏切られまくって読み終わる頃にはすっかり満足していることでしょう。
■ 評価としては
大変満足な星5つ。なんか最近評価が大変甘いような気もしますが、まあ気のせいです。
そういえば、エロゲーという観点で全然見てませんでしたが・・・・・・まあ、最近のラブコメは何でもエロゲーに見えるもんです(多分)。
気にしすぎたら負けということなんだと思います。