忍び寄る影

■ それは
 それは気付かぬうちに部屋に侵入し、ターゲットが気付く前に仕事を済ませる。

 そして何事もなかったかのように去っていこうとする。

 しかし、私はそれを許さない。

 たとえ手遅れだとしても、この手が血に染まろうとも、逃げ切ることは許さない。

 しかし、それは嘲うように私の手を掏り抜け、私を翻弄する。

 それでも私は逃げ道を塞ぎ、結果の決まった戦いを挑む。

 如何様に逃げようとも、いつまでも逃げ切れるはずもない。

 私に気付かれた時点で全ては終わりを告げているようなものだ。

 そうして、今夜も私の手は血に染まる。

 さようなら。もう見たくはない。

 だってアレですよ。蚊に刺されたら嫌じゃないですか。