花守の竜の叙情詩

花守の竜の叙情詩 (富士見ファンタジア文庫)

花守の竜の叙情詩 (富士見ファンタジア文庫)

 先月から感じていた私の直感に間違いはなかった。

■ ストーリー
 小国オクトスは隣国のエッセウーナによって征服された。

 オクトスの王族は軒並み殺され、オクトスの王女であったエパティークは捕まり、牢へ閉じ込められた。

 一方、エッセウーナの第二王子であるテオバルトは病床に伏せる父の病を治すため、第一王子であるラダーによって、半ば彼を王位継承争いから追い出すように、エパティークを生贄に捧げ願い事を叶えると言われる伝説の銀竜を呼び出すように命じられた。

 彼が唯一親愛する妹のロゼリーのために、彼は旅立つをことを決意する。

 そしてテオバルトとエパティークは互いにとって望まない邂逅を果たした。

 彼女はテオバルトに抵抗するも、彼はその全てを一蹴し冷たくこう言い放った。

 「これから、俺と君とで旅に出る」

 しかし、それは捕まれば命を失う死出の旅路であった。

■ なんというか
 物凄く救われない物語でした。

  • 無知であることは、救いようのないほどに愚かしく、虚しい。
  • 信じる想いとは、裏切られる想いを受け入れて、それでも自分が何を求めるかによって決まる。

 浮かぶのはこんな言葉だけ。

■ さらには
 この物語に完全なものは存在しません。

 その望みが強ければ強いほどに叶うことはなく、残るのは後悔だけなのです。

 誰もが全てを得ることなく、誰もが全てを失うことは有りません。

 何かを得た者は、何かを失わなければならないだけなのです。

 その真意が想い人に届く頃には、全てが終わっています。

 行き場のない慟哭が心に響いて残るだけなのです。

■ それでも
 伝えることに意味は有ります。

 後悔して得られるものも有ります。

 本当に大切なものに気付くことが出来るのです。

 全てを失った者が何も得られないわけではないのですから。

■ そうして
 洗練された美しい雪割草は、野に咲く雛罌粟ように力強く咲き誇ることが出来るのです。

 伝説の銀竜も遥かな空から、その様子を優しく見守ってくれることでしょう。

■ 評価としては
 星5つ。多くは語りません。読んだ人が自分が感じたように感じればいいのです。