BLACK BLOOD BROTHERS(9) 黒蛇接近

■ ストーリー
 前回ミミコを暗殺しようとして失敗した九龍の血統だが、さらなる恐ろしい計画を練っていた。

 なんとミミコを《九龍化》しようというのだ。

 前回を超える更なる危機が、ミミコに襲い掛かる。

 それに合わせるように、一人の吸血鬼がシンガポールを訪れる。

 それは、魔女モーガンの血統の長老で三姉妹の長女であるアンヌ・ウォーロックだった。

■ これは
 表紙を飾って表題にもなっているカーサの物語といっても過言ではありません。

 混血児として存在し、そして九龍の血統に染まった彼女。

 何故彼女は、賢者やケインを裏切ったのか。否、何故彼女は、賢者やケインたちを信じ切れなかったのか。

 彼女は強く、しかし脆い。

 アンヌによってケインがウォーロック家を去ったと聞かされたときの胸中は如何なるものだったのか。

 どうしようもなく、言葉にもならない。

■ それでも
 彼女は足掻きます。自分が自分であることを確かめるかのように必死に。

「その強さと脆さこそ、私の本質だ。矛盾と未熟が、私なんだ。それは、新たな力になり得るものだ。調和と定めでなく、破壊と創造に。宿命ではなく、可能性にっ。見るがいい、アンヌ・ウォーロック。我が闇の母よ。私は、最後まで、私を貫く」

 たとえ、惨めに叱咤されようとも。

■ 彼女の失敗は
 勝手に全てを自分で自己解決して、誰にも相談しなかったことなのでしょうね。

 彼女たちを信じ切れなかったばっかりに。

 いや、彼女たちを信じなかったばっかりに。

■ そしてついに
 香港聖戦時代の彼女が明かされはじめます。

 九龍の血統が如何にして発現したのかが次巻示されます。

■ また
 世界の吸血鬼が、人間と協和する未来について話し合う場面は凄いですね。

 久しくいい所がなかったジローさんも、久しぶりにいい仕事をします。

 ジローさん、もっと頑張れ。

■ 評価としては
 星5つ。あまりにも切ない。短編集を読んでるとなお切なくなること間違いなし。

 アンヌ・ウォーロックに微笑みかけるミミコのイラストは綺麗過ぎてある種の感動を覚えます。必見・・・・・・かもしれない。