MAMA
- 作者: 紅玉いづき,カラス
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2008/02/10
- メディア: 文庫
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■ ストーリー
サルバドール・トトは確かな魔術師の家系に生まれながら、才能に恵まれず、魔力も少なかったため『サルバドールの落ちこぼれ』と呼ばれていた。
級友にはいじめられ、父と母からは見放され、彼女は泣きながら逃げ出した。
逃げた先は神殿の書庫。追いかけてくる教師たちの声に怯えながら、書庫の深く、普段入ることを禁止されている禁書の棚の奥にまで逃げ込んだ。
そこには鎖で繋がれた扉があった。
サルバドールの子供たちの間では、神殿のどこかに数百年前に封印されたそれは強い魔物がいて、それが封印から解放される日を今か今かと待ちわびているらしいと噂されているのだ。
トトもそれを知っていて思わず息を呑んだ。もしかするとここがそうではないかと。
その扉の鎖も鍵も思ったより腐食が進んでいて、扉にぶつけると簡単に壊れてしまった。
なぜそんなことをしたのか? 呼ばれた気がしたのだ。その扉の向こうから、誰かに。
そのとき、書庫入り口から声が掛かった。
驚いたトトは思わず、その扉の奥に入ってしまう。
そこは光が入る余地の無い暗闇の空間だった。上がどこか、下がどこなのかさえもわからない。
そこで声が聞こえる。聞こえてはならない声が。
■ サルバドール・トト
捨てれることに怯える子供。
呪われた力を得て、あらゆる言語を聞き分け、そして《人喰いの魔物》を使役するもの。
傷付くことを恐れ、傷付けることを悲しむ。
臆病で優しくて独占欲の強い女の子・・・・・・なのかもしれない。
■ やがて
年月がたち、親から外交官の仕事を進められた彼女はティーランという美しい姫と逢うこととなる。
彼女もトトと同じように、嫌がらせや批判、王位継承権の低さから陰湿なイタズラを受けていた。
しかし、彼女は強く美しかった。自分が自分らしくあるために。
彼女もトトと同じように目に見えない何かと戦っているのだ。
ならば自分にも出来るのではないか。彼女と同じ《女》なのだから。
■ そして
彼女は踏み出す。《人喰いの魔物》の力も借りず、トトだけの戦いを生き抜くために。
(微笑え)
美しいドレスは強固な盾。
鮮やかな微笑みは鋭利な剣。
全ての害意を跳ね除け、万物を切り裂いて。
守るべきはただひとつ、価値もなければ形もない、誇りという、確かな己の証しだった。
彼女は戦う。出来損ないでなくなるために。
■ そうして
彼女は変わっていく。
強く。美しく。
■ 評価としては
星4.5といったところ。十二分に楽しめましたが、この作品に限って言えば終局が予測できたことが残念だったかもしれない。
私もトトのように強くありたいものです。