大草原の歌
■ 概要
曲名:大草原の歌(Song of the Prairie)
作曲:レックス・ミッチェル(Rex=Mitchell)
グレード:3
出版:ルドウィグ・ミュージック
指揮:汐澤安彦
演奏時間:6分45秒
ちなみに、曲名・作曲者・グレード・出版を除いては下記音源(CD)からの情報となります。
やっぱり聴きながら書いてますが、この曲の冒頭はいつ聴いてもヤバいくらい感動しますね。
■ 音源紹介
- アーティスト: 東京佼成ウィンド・オーケストラ,汐澤安彦
- 出版社/メーカー: ソニーミュージックエンタテインメント
- 発売日: 1986/04/21
- メディア: CD
- 購入: 2人 クリック: 90回
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■ この曲は
レックス・ミッチェル作曲の中で『海の歌』と同じくらい有名な曲です。
この人の曲はどれを聴いても感傷的になりやすく、私好みの作風です。
■ 私的感想
この曲は、夜明け前の大草原にいるような郷愁を漂わせて最初に入る中低音の静かな響きから始まります。
この曲の最初のゆったりとしたフレーズはダイナミクス*1とピッチ*2コントロールが大変重要です。それがこの曲のゆったり部分の全てを決めます。
音源をしっかり聴くとその大切さがわかると思います。
ここを聴いているだけで不安に駆られるような、でも穢れの無い美しい景色の中に立っているようで心が洗われます。
いきなりなんですが、私はこの曲の中でここが一番好きです。
トランペットの旋律が入ってくる前のたった4小節間のフレーズですが、ここがこの曲の雰囲気の全てを決めると言っても過言ではないかもしれません。
そしてその中低音のフレーズにトランペットの主題が加わることで、大草原に郷愁という雰囲気だけでなくこの曲に色をつけます。
ここまでだと、写真の中の大草原を見ているようですがその後、木管が新たな意味をもたらします。
木管が金管と入れ替わり大草原に新たな色を付け加えるのです。それは空気感。この場所が生き物のいる場所であることを証明するために息吹を与えるのです。
そして金管と木管が交わり、全ての役者が揃った時にこの物語は産声を上げるかのように華々しい始まりを告げます。
主旋律の始まりの華々しさに華を添えるようにホルンとアルトサックスの対旋律が歓喜の声を上げます。
そしてその後すぐに始まりに怯える様に静かになります。
そこにおずおずと木管がが優しく主旋律を引きつぎ、怯える皆を引率するように前に出ます。
また、パーカッションも静かに動き出し、次第に景色をはっきりさせてゆきます。
そして新たな一歩を踏みしめるようにアルトサックスが、オーボエが、木管が続き、最後に金管がそっと後押しをし、皆で一歩ずつ歩き始めます。
そして夜が明け、大草原は明るく移り変わります。
シンバルのスピード感ある打ち込みとスネアの鋭さが動物の疾走感を出し、非常に引き締まった緊迫感をかもし出します。
そして管楽器とスネアがお互いがお互いを補間し合うように入りあい、この曲が動的始まりを告げます。
トランペットの流れるような旋律に他楽器が鋭い打ち込みをいれ、大きな躍動感を与えます。
そして、トランペットの主題と次のフレーズの間の空白の一小節を木管が受け継ぎ、金管中低音の腕の見せ所がやってきます。
金管中低音の激しい動きに、スネアと高音管楽器が華を添えます。再びの同じフレーズにさらにホルンとサックスが新たな音を加え、よりかっこよさが増します。
その後、トランペットの旋律とホルンの対旋律が華々しく色づき曲を活性化させます。
そしてユーフォのソロが美しく通り抜け、全てを断ち切るように音を切り、すぐにすばやい動きの切れ込みを入れ、さらに前へ前へと急かすように進みます。
アルトサックスのソロがひょうきんな顔を覗かせると、新たなトランペットの旋律へと移ります。
そこは、低音が躍動感を、トランペットが旋律を、クラリネットが対旋律を、中音が静かな合いの手を打ち、隙間無く音を入れ、聴衆を楽しませてくれます。
そして、中音の主題が入ります。野太く、しっかりとまとまったユニゾンは力強さを感じさせます。
再び、2つ前のフレーズが始まりますが、クラリネットとフルートが入れ替わり、新たな一面を覗かせます。
そして再び金管中低音の激しい部分が過ぎ去ります。しかし、その激しい動きとは裏腹に、ここまで上がり調子だったこの曲を落ち着かせてくれます。
そしてトランペット&ホルンコンビが再び華々しく色づいたフレーズで盛り上げ、そしてトランペットが何かを暗示するかのようなユニゾンで曲を引き締めてくれます。
そして、コルネットの主旋律が入りそれにトランペットが加わり、曲のクライマックスへと進みます。
そして、雄々しきフレーズと共にゆったりと、しかし堂々と歩み、ティンパニが一歩一歩踏みしめ、華々しく終わりを告げます。
■ ああ
この曲を演奏し、もし完全に全体が一体となったなら、演奏者冥利に尽きる曲になるかと思います。
美しい曲で、ある程度吹奏楽に慣れ親しんだ人には超オススメの曲です。
ネット上でも試聴できるところがあったと思いますので、ぜひ聴いてみてくださいな。