真実の扉、黎明の女王

 『約束の柱、落日の女王』に続く第2弾。

■ ストーリー
 カルロは軍を辞して、薬師や行商人として当てもない旅を続けていた。

 満たされない静かな日々に何かが違うと感じ、海を渡ってイリアーラ帝国のオスハン地方を訪れた。

 そこでかつてカルロが戦場で治療した兵士がベルロイド工房で型師として働いていると聞いて足を運んでみることにした。

 その途中で何者かに追われている一人の少女に出会う。

 彼女はクレーシア・ベルロイドというベルロイド工房の見習い職人だった。

 彼女を助けた後、カルロは工房に赴き、そこで一晩お世話になることになった。

 ところがその晩、彼女はまたしても何者かに襲われてしまう。

 再びカルロは彼女を助けようとするがさらにそこに第3者が割り込んできた。

 彼女の名はジシェル・オックス。ウェルラント王国の中のアングス国より彼女を助けるためにやってきた。

 そして彼女は言った。クレーシアはウェルラント王ゴードウィンとアングスの女王アリーシアの間に生まれた娘だと。

■ どうすればいいのだろう?
 クレーシアは自分の身を護るため、しかたなくアングスの女王になることに決めます。

 そんな不安な折にカルロは彼女の前から姿を消してしまいます。同時にジシェルも姿を消し、彼女の心は不安で一杯になりました。

 さらに、異国の地での生活は想像以上に厳しく、慣れない言葉や息苦しい慣習、そして女王ゆえの孤独が彼女を襲います。

 彼女は自分に出来る精一杯の虚勢を張ります。

 そう決めるとクレアは、ただ冷たく無愛想な人にしか見えないであろうことを自覚しながら、徹底してその態度を取り続けた。

 ウェルラントでの味方はジシェルと大臣のファゼスだけ。だから彼らがいない晩餐会で無表情で孤独を深めていると――

 その態度は、彼の姿を捉えて――彼がこっちに向かって歩いてきて、心臓が飛びはねるほど驚いて、どきどきして――それでも変わることはなかった。

 彼の、カルロの姿が目に入った。そして彼は彼女にウェルラントの言葉で形式的な報告をした。ただそれだけなのに――

 代わりに涙が頬を伝った。泣いてはいけないと思うほどに。

 それでも顔は無表情のまま動かない。
■ カルロは
 彼女の変貌を見て動けなくなります。

 危うさを秘めた孤独な表情はかつてのクリムを思い出させ、そして動けぬ自分に自問する。

 ――私は・・・・・・どうしたいのだ?

 なんとか自分を取り戻して彼女を会場から連れ出すと、彼女の感情がついに溢れ出し彼に縋って嗚咽します。

 国に関わらず生きていくとそうしたいと願っていたカルロでしたが、その様子を見て、せめて彼女の力になりたいと決意します。

 そして再び、封印した自分の能力を発揮し始めるのですが・・・・・・

■ 想い
 クレアにクリムの面影を見るカルロは彼女に不思議な感覚を抱きはじめます。

 しかし、それは彼女がクリムに似ているからなのか? それとも――?

 行き場のない想いはやがて最後に収束してゆきます。

■ 後悔、そして彼は業を背負う
 そこに至るまでに、彼に悲劇が襲いかかります。そして思うのです。何故自分が生きているのかと?

 そして彼は――

■ それにしても
 相変わらず読みやすいですね。丁寧な表現と心理描写でなかなかどうして楽しませてくれます。

 ただ、最後の部分の心の整合性を取ることは少し難しかったのではないでしょうか。

■ 評価としては
 星4.5です。読めば全てがわかります。考えなくてもいい。ただ感じればいいのです。