花守の竜の叙情詩(2)
- 作者: 淡路帆希,フルーツパンチ
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2009/12/19
- メディア: 文庫
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■ ストーリー
銀竜となったテオバルトは月神フォスの契約に従い、悪魔を狩り続けることとなった。
そんなある日、先達の銀竜ジレーザと共に悪魔を狩っていたら、力の強い悪魔にテオバルトは襲われてしまう。
銀竜になりきれなかった銀竜の残滓《虧月の竜》であるグリゼルダと悪魔の王であるキャンディードに罠に嵌められ、力及ばずテオバルトは銀竜の力をグリゼルダに奪われ、《虧月の竜》のように人間の姿に戻され、そして左腕から頬にかけて銀竜の鱗が張り付いた姿となった。
一方、エリスと共に優しい老夫婦であるデボラ・テネレッサとセルジオ・テネレッサに拾われたアマポーラ・テネレッサは性と生きる場所を与えてくれた彼らの恩に報いるために働いていた。
満足に農耕具も扱えず、その他の能力もないアマポーラは村からは弾かれ者だったが、銀竜となったテオバルトを報われない事を知りながら想い続けることが彼女の生きる力となっていた。
ある日エリスと共に街に織物を売りに出かけたアマポーラは領主の次男に見初められてしまう。歌姫《カンタトリス》として。
それが奪われた力を取り戻すためにグリゼルダを討つための旅に出たテオバルトと交錯することにも気付かずに。
■ 祈りを捧げ加護を受ける者とそれに報いる者
人は感謝を忘れ満足せず慢心を起こし傲慢となる。
それでも神は受け入れようとする。
そのすれ違いはどこまでも続く。そして破綻を迎え、それでも続く。
そこには何が残ると言うのだろう?
■ 歌姫《カンタトリス》
神に祈りを捧げる者。
祈りを歌に乗せ神へと届かせる者。
その声はどこまでも届かぬ人の元へ――
■ しかしまあ
続きが出るとは思わなかったので本当に驚きました。嬉しい誤算です。
前回があまりにも綺麗に終わっていただけに、ここから続かせるのは難しいとずっと思っていたのですが、これまたなんの違和感もなかったのにビックリ。
話が全く損なわれていないのも、全くもって嬉しい限りですね。
■ 相変わらず
なんとも報われない話は続いています。
近しい、でも届かない。届くことはない。そのもどかしさは見ていてとても切ないですね。
世の理不尽で不平等な流れには誰も逆らえないのかもしれません。
■ それでも
彼女は祈りを捧ぐ。歌に乗せ彼へ届くように。
天翔けるあなた
見えますか あなたが命をくれた花 ここに咲いています
散ることも知らず今も鮮やかに
迎えの翼に迷わずここへ来てほしくて
去りし日の誓い
待っている 届きましたか私の声が あなたの翼まで
月の出を夜ごとに焦がれています
星の海の中にあなたの姿が見たくて
光をここに どうか照らして
夜明けが怖いのです 月影を攫ってしまうから
水面に浮かぶ月明かりの桟橋が私を誘う
消える前に渡っていけば あなたに会えると
光をここに どうか照らし続けて
心が誘いに負けぬよう 迎えを待っていられるように
■ そうして
力強く美しい雛罌粟は永遠に失われるはずだった者と再び触れ合います。
懐かしさを持って、僅かな喜びを得て、そして――
■ 評価としては
星5つ。どうしようもなくこの話は好きだなぁ。
これからも続きが出るようですし、これは楽しみなシリーズとなりそうです。