へヴィーオブジェクト
- 作者: 鎌池和馬
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2009/10/10
- メディア: 文庫
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■ ストーリー
時代が進んでも、結局戦争がなくなることはなかった。
あらゆる技術が開発され、戦争は高度化し、今やオブジェクトと呼ばれる50メートル級の超大型兵器だけが戦争の全てを決めるようになった。
何故ならオブジェクトはあらゆる機銃・砲弾・ミサイルを豆鉄砲扱いするほどの装甲を持ち、その装甲は核攻撃にすら耐えることが出来た。さらに、オブジェクトはレーザービーム、レールガン、コイルガン、下位安定式プラズマ砲などの最新兵器を持ち、その砲門の数は100門を超え、今までの主兵装である戦車、戦闘機、原子力潜水艦などの『旧世代兵器』をあっさりと駆逐してしまったのだ。
そんな時代にアラスカの戦場に派遣留学した学生・クウェンサーと正規の軍人でレーダー分析官であるヘイヴィアは、大して意味があるかもわからない滑走路の整備をやらされていた。
そんな折、軍の食事であるレーションに飽きていたヘイヴィアはクウェンサーが適当に口にした『鹿を狩ろう』という言葉を無理矢理拾い上げ、今ではほとんど使われないライフルを持ってあっさりと鹿狩りに赴いた。クウェンサーもレーションには飽き飽きしていたので偶にはいいだろうと思い、こちらも今ではあまり使わないサバイバルキットを用いて釣りに勤しんでいた。バレたら懲罰ものだが。
しばらくすると2人の傍に偶々ライフルの銃声を耳にした一人の少女が近づいてきた。
華奢なクウェンサー以上に戦場にそぐわないその金髪の少女は『エリート』と呼ばれていた。
『エリート』とは今や戦争の代名詞となっているオブジェクトのパイロットの事であり、彼女はパイロットになる過程で青から空色に薄まった瞳を怪訝に瞬かせていた。
彼女――ミリンダとヘイヴィアとクウェンサーのこの巡り合いは、オブジェクト戦争に新たな火種を持ち込むことになる。
■ とまあ
表題にもなっているオブジェクトの脅威的スペックを散々書いてきたわけですが、ヘイヴィアとクウェンサーのコンビがまさかの生身でオブジェクトに立ち向かうのが今回のお話です。
ここまで書いておいて何言ってんだと思うかもしれませんが、偶々強制的にそういう立場に陥った2人が悪い。うん。
ただまあ上記の通り、オブジェクトのスペックは圧倒的です。
戦場にでれば文字通り一騎当千で、オブジェクト以外のあらゆる兵装はただただ沈むしかありません。そのオブジェクトにしてもさらなる新たな型が開発され、オブジェクトの多様化も広がっています。
そんな中生身で頑張れって言われても、普通は無理なんですが・・・・・・
■ オブジェクトの性質故に
逆に生身でも頑張れる瞬間があるもんだと感心しました。
もちろん正面から行けば一瞬で黒焦げですが、もちろんそんなことをするはずがありません。
ありとあらゆる運を味方に付け*1(まあ、もちろんそれだけではないんですが如何せん運強すぎ)、彼らが持てる精一杯の知識と機転を持ってあらゆる局面を打開する姿は痛快と言えます。
絶対無敵の存在なんてないのだと。
■ ただまあ
なんというか・・・・・・普通では上がらない戦果が上がったからといって安易に次の戦場に送り出すのにはさすがに違和感を覚えましたね。
戦況を訊いていて、あっさり次に出そうとするのはさすがにねぇ・・・・・・
後にある程度の理由は訊かされるんですがそれにしたってねぇ・・・・・・
この辺のノリがコメディっぽかったのが残念に感じました。
■ 恐らく
私がなんともいえないモヤモヤを抱えているのは、コレのせいなのでしょう。
少年漫画っぽいコメディにもシリアスにもよらないこの感覚がなんとも切ない(色んな意味で)。
後半の方が大分シリアスなだけに、出来たらこの路線で押して欲しかった気もする。
■ あとは
ヘイヴィアとクウェンサーの2人が戦場に出ているときの緊張感が後半の方になるにつれてあんまり感じられなくなってくるんですよね。
コイツらならなんとかしてくれるという安心感が湧いてくるのはいいんですが、逆にありすぎて緊張感を感じられない。
まあ、私個人の勝手な希望なのでしょうが、出来たならば一度ホントにどうしようもないほど完全なピンチ(結構あったような気もするが)に陥いるシーンが欲しかったかもしれない。
■ 評価としては
なんだか説明不足な気がする星3つ。
どうでもいいんですが、終わり方があまりにも定例パターンすぎて笑ったのは秘密です。