15×24[イチゴー×ニイヨン] link one せめて明日まで、と彼女は言った

■ ストーリー
 徳永準は死に向かおうとしていた。

 自分を自分から解放するために。

 それが知らない誰かの人助けにもなると信じて。

 大晦日の今日、彼はそれを実行すべく誰も起きていない早朝から家を出た。

 しかし彼は気付かない。世界は思うままにはならないことに。

 そして彼は知らない。自分の世界は思った以上に広いことに。

■ 簡単に説明すると
 非常にタイムリーに動く物語。

 徳永準の死の可能性が偶然にも一人の人間から発信され、それを見た人間が動き出す物語。

 しかし、その動く向きが完全に一致しているわけではない。

 自らの為に彼を救おうとするもの。

 打算から彼を救おうとするもの。

 そこにある死を見ずには置けず、それが回避されるのを願うもの。

 その事実を知っても傍観するもの。

 そして、彼の死を見届けようとするもの。

 その思惑と何処に続いてゆくのでしょう?

■ 動き出す世界
 自分のとった行動が自分の思った以上に事態を動かしてしまったり、自分の思うままに動かなかったりと眺めていて人間って面白いなぁと思いました。

 何も無い所から少しずつ情報を集めて、彼の行動先を考えたり、彼自身の行動理由、彼の本意を探そうと模索する様は、まあ現代思想から鑑みれば凄く行動力があるなと疑問を抱く所も最初はあったんですが、物語が進むと気にならなくなりましたね。

 その疑問の正体は恐らく"人間の善意"。私が自身を卑屈であると認識しているが故のものなのかもしれませんが・・・・・・

■ ただまあ
 登場人物が多くて泣ける。最初のカラーページだけで16人もいるんです。

 でも皆意外と個性があるので、名前が出るたびにカラーページに戻ってその印象を頭に叩き込むと物語に溶け込めていい感じです。

 主要な登場人物だけでもピックアップしようかと最初は考えたんですが、皆重要だよっ(涙目)。

■ というわけで
 頑張って人物を見分けようコーナーを設立。えっ、いらない? まあまあ気にせず付き合って下さいな。

 順番はテキトーです。カラーページのキャラのみ紹介。

 徳永準・・・・・・カラーページの中心を飾っているのに一番影が薄い所にいる不思議。簡単に言ってしまうと容姿端麗なのに根暗という感じの人物。でも、ひっそりと優しい。主人公なはずなのに出番は少なめ。

 笹浦耕・・・・・・自分なりの必要最低限の人付き合いしかしない不思議な価値観を持つ。それ故のテキトー主義者なのだが・・・・・・ある人物の願いで仕方なく準の捜索に乗り出す。しかしその思考は誰よりも鋭い。準(のケータイ)から連絡が送られた美術部四人組の一人。何気なくキーマンの一人。

 伊隅賢治・・・・・・死に興味があるちょっと厨二な人物。今回準を死に逝こうとするきっかけを作った人物の一人でもある。非常に自分本位。準(のケータイ)から連絡が送られた美術部四人組の一人。キーマンの一人。

 渡部亜希穂・・・・・・準の死の可能性を広めてしまった張本人。嘘で身を固めるのが癖というか玉に瑕になっていて手癖も悪い。端的に言うとトラブルメーカー。ひょんなことから知り合った枯野透に一目惚れする。キーウーマンの一人。

 枯野透・・・・・・驚くほどお人好しな好青年。ポジティブシンキング思考が強い。亜希穂をあっさり信用する所にそれらが表れている気がする。キーマンの一人。

 在所惟信・・・・・・家がお金持ちな以外これといって特徴の無い人物。左右田正義を親友だと思っている。今のところ、キーマンといえるほどの活躍はしてない。

 左右田正義・・・・・・非常に利己的な人物で、今回の事件の解決を目的ではなく手段と捉えている。手の早さや考えはそこそこに鋭い。キーマンの一人。

 私市陶子・・・・・・お腹に新しい命を宿した妊婦さん。新たに生まれてくれる我が子に自信を持って母と誇れるように今回の準探しに乗り出す。キーウーマンの一人。

 西満里衣・・・・・・非常に行動力を持った車椅子少女。コンピュータ関連扱いに通じている。陶子の呼びかけに応じ、準探しに乗り出す。キーウーマンの一人。しかし車椅子で20km/hは凄いと思う。

 三橋翔太・・・・・・後先考えずに直感を信じて行動する。あんまり頭は良くないものの、ケンカすることにかけては類稀な能力を持つ。キーマンの一人。

 高遠しのぶ・・・・・・基本的に他人にやる気の出せない笹浦耕の原動力になっている笹浦耕の彼女。目の前の死を見過ごして自ら幸せになれない優しい人物で、耕に『彼が死にたいって思う気持ちを、せめて明日まで、遅らせようとしてみて。わかった? じゃね!』と準探しを依頼した。今のところキーウーマンかは微妙なライン。

 温井川聖美・・・・・・根拠の無い薄情さに身を任せて準の騒動を傍観している。自分の家族を素直に愛せないことに心を痛めている。準(のケータイ)から連絡が送られた美術部四人組の一人。今のところキーウーマンではなさそう。

 温井川賢美・・・・・・聖美の妹で天真爛漫で愛らしい。準の騒動と同時期に起きたおばあちゃんの危篤を心配している。今のところキーウーマンではなさそう。

 オサリバン・愛・・・・・・日本人とアイルランド人のハーフ。容姿端麗でグラビアアイドルをやっている。何気なく苦労人。ひょんなことから、準と接触する。キーウーマンの一人。

 藤堂真澄・・・・・・道場主の孫息子で四人兄妹の末っ子。有志自警団の団長でもある。道場というお堅い場所柄にいながら、金髪&長髪で不良っぽい見た目をしている。準やトラブルメーカーの亜希穂や三橋翔太と接触。今のところキーマンではなさそう。

 高遠未由帆・・・・・・しのぶの妹。結構お茶目。準を探す耕を手伝ってくれる。今のところキーウーマンではなさそう。


 っていうかほとんどキーマンorキーウーマンだよ(涙目)。

 今活躍していない人物ものちのち活躍しそうなので期待。

 自分が見直すために作ったようなもんだけどわかりやすくていいなぁ。

 このほかにも、自警団のノブさんや耕の妹の笹浦杏奈ファラオさんなる人物も登場している。

 ちなみに2巻も既に読んでいるので、まだ登場人物が増えることは知っています。泣ける。

■ というわけで
 こんな感じの人物たちが準探しに関わってくるのですが、2巻を読んだからわかるのですが、この作品は《次回に続く》が当たり前のように使われている作品っぽいので非常に盛り上がっている所で遠慮なく切られてます。

 ひょっとしたらこのシリーズが完結したところで、この作品の第1巻が気に入ったら買うといったスタイルを取った方がいいかも知れませんねぇ(精神的に)。

 まあ、私は普通に続きを買いますが。

■ 評価としては
 星4つ。この作品は全部感想を書き終えてから総評を改めて出したいですねぇ。

 全部読みきらないと満足できる気がしない。