されど罪人は竜と踊る(1) Dances with the Dragons

されど罪人は竜と踊る 1 ~Dances with the Dragons~ (ガガガ文庫)

されど罪人は竜と踊る 1 ~Dances with the Dragons~ (ガガガ文庫)

■ ストーリー
 『咒式』という力が蔓延する世界。

 魔法のように事象を操るそれは超科学ともいうべき代物。

 人間もそして忌み嫌われる竜も《異貌のものども》でさえも『咒式』を用い、己が心のままに今日も行き続けている。

 そんな中、後衛担当の攻性咒式士で不運に魅入られた男であるガユス・レヴィナ・ソレル(通称ガユス)と、ガユスの相棒で前衛担当の攻性咒式士で闘争に魅入られた男であるギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフ(通称ギギナ)は今日もお互いを悪態を付きあい罵りあいながら、依頼で人間を襲った竜を狩っていた。

 しかし、予想以上の大物の竜と遭遇してしまった。

 いつものようにガユスは自らの不運を呪いながら、ギギナは大物に出会えた喜悦の表情を浮かべ死闘を演じ、見事に竜を撃破した。

 それがさらなる不運の引き金であることにも気付かずに。

 本格ダークファンタジー、開幕。

■ 咒式
 簡単な説明があらすじに載ってます。それは、

 作業量子定数hを操作し、局所的に物理法則を変異させ、TNT爆薬や毒ガスを生み、プラズマや核融合など途方もない物理現象を巻き起こす方程式。

 と書いてあります。要するに、『科学の力で魔法が使えるようになった』と考えるべきです。そうじゃないと頭がこんがらがって大変なことに。

 なぜなら、

 宇宙を埋め尽くしてエネルギー的に安定した物質の質量を司る質量量子。

 1ボルトルの電位差がある自由空間内で電子ひとつが得るエネルギーが1電子ボルトルであり、素粒子の動きにくさ、すなわち質量に換算すると1.783×10^-36キログラムルとなる。質量量子の質量下限値は約1140億、上限値は1530億電子ボルトルとされた。人類は世界を構成する電磁力に重力、大きい力に小さい力の4つの力に分かれる前の一つの力。

 6.626068963×10^-34(J・s)と定義されていた作業量子定数hを操作し、局所的に変異させ、Δq・σp+Δp・σq+Δp・Δq≧(又は≦)h/(4π)によって、熱と時間の不確定性の積分が作業量子定数hを少なくすること、又はイプラット理論により大きくすることで、中間子のエネルギーが陽子や中性子より大きくなる原理と同様に、存在する時間が短いのであるならば、エネルギーの不確定性、つまり物質の大きさは増大するという原理を基に、作業量子に干渉すること。

 これが『咒式』の基本中の基本の基礎らしいです。何とか文章をわかりやすく書いてみたいんですが、うん、意味不明すぎますね(泣)。

 この世界の人は頭が良すぎる。

 ちなみに攻性咒式士は、その難しい演算を魔杖剣・魔杖刀などと呼ばれる武器(演算装置)で行い、頭に小難しい式を浮かべながら、咒弾や咒式具と呼ばれるものを出力装置にして放つそうです。

 ・・・・・・無理。

 なので戦闘シーンは途中の小難しい式や物質を全て無視して結果だけを見るようにしてます。だって見てもわかんないんだもん(泣)

 難しく考えたら間違いなく負け組(色んな意味で)。

■ ちなみに
 戦闘シーンは超燃えますね。(化学物質の名前は一切理解できないですけどね)

 ギギナの臨場感溢れる近接戦闘。ガユスの事態を打開するために必死に頭を回転させ、ギギナをサポートしつつ、自身の危機も様々な機転と多大な無茶で切り抜けるところは凄いと思います。

 戦闘中の罵りあいも笑えますしね。フフフ・・・・・・

■ それはさておき
 この物語は非情理に満ち満ちています。

 ガユスは忘れられない過去に引きずられ、今なお引きずり続けている。

 彼の友人は過去を懐かしみながら過去の妄執に囚われ続ける。

 ギギナはただただ闘いを求め剣を振るい続ける。

 愛するものを失ったものは、愛するもののために等価の復讐を求める。

■ しかし
 世界は何も変らない。

 守りたい今を捨て、守りたい今を守り、そして何も変らない。

 卑屈でありながら卑怯を受け入れられず、ただ生きるために自分を肯定することしか出来ない。

 変化を望み、受け入れず、ただ何かに狂い、どこまでいっても踊り続けるだけ。

 ある人物がそれをこう評してくれています。

「悪役は倒されず、なにも変わらず、なにも起きていない。主人公が存在しない劇のための劇」

 ガユスとギギナはそれでも前に進むことが出来るのでしょうか・・・・・・

■ 評価としては
 文句なしの星5つ。

 まだ第1巻目なのでグロ度とダーク度は低めですが、続刊は凄いですよ。フフフ・・・・・・