鷲見ヶ原うぐいすの論証
- 作者: 久住四季,カツキ
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2009/08/10
- メディア: 文庫
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■ ストーリー
麻生丹譲は授業の終わった六限終わりに生徒会長である薬歌玲に呼び出された。
人嫌いな数学者であり同時に希代の魔術師とも呼ばれる霧生賽馬の開く記念パーティーに出席し、彼に会ってこいと突然言われたのだ。
彼の人嫌いは非常に有名で、そんな彼がパーティーを開くことは非常に珍しく玲は出席したかったのだが、生憎と玲自身は予定が詰まってて行けないので代理で行けと言うのだ。
さらに頭はいいが筋金入りの出不精である鷲見ヶ原うぐいすを連れていけというのだから、譲は頭を抱えることになる。
彼女に恩のある譲に断れるはずもなく、仕方なくうぐいすに提案すると彼女はあっさりと了承してくれた。悪魔の存在の論証と共に。
■ うん
ミステリーとしては物語の長さ的に薄いと感じましたが、この作品の魅力はなんと言ってもタイトルにも付いている『論証』にあると思います。
1.『"悪魔"の存在を否定することは、人間には不可能である』――悪魔の証明
2.『ある論理体系が無矛盾であるとき、その体系には必ず証明不可能な命題が存在する』――第一不完全性定理
3.『ある論理体系が無矛盾であるとき、その体系は自己の無矛盾性を証明することは不可能である』――第二不完全性定理
4.『外部との連絡が一切断たれた状態で他殺体が発見された場合、犯人は必ず環の内部に存在する』――閉じた環の論理
5.『連続性が期待される事実に対して非連続性が観察される場合、その間隙を繋ぐ"鎖《リンク》"が存在する』――失われた鎖の論理
6.『死体の首が切断されていた場合、そこには必ず合理的な理由が存在する』――首切りの論理
7.『起こった出来事は全て正しい』――科学の論理
とまあ各章毎に表題されていて、それぞれについてうぐいすが論証してくれるんですが、それが非常にわかりやすくて面白いですね。
うぐいすと対照的に頭の悪い譲を上手いこと使って、まるで私たちに説明してくれるように読めるためににわかりやすくなっています。
ただ、譲は頭が悪いといわれているのに察しはいいので、頭の悪さも察しの悪さも一流の私にはちょっと付いていけなかったところもありましたが新しい世界観を教えて貰えたと思います。
特に、悪魔の証明については思わず『なるほどっ』と思わせてくれたので、一読の価値はあると思います。
■ ちなみに
何故『GOSICK』を思い浮かべたのかというと、譲とうぐいすの役回りが、一弥とヴィクトリカの役回りに似てたからです。
特に他意はないですよ。
■ それはともかく
うぐいすかわいいようぐいす。
もう何と言うか、うぐいすが可愛らしすぎです。どのくらい可愛いかというとうぐいすの気持ちに気付かない譲に対する行為があまりにも・・・・・・うん、ここで言うのは止めておきます。気になる方は本書を読みましょう。
どうでもいいけど鈍感に程があるよ譲。なんてわかりやすくて美味しいキャラだ。
■ ただ
最後がちょっと物足りない感じがしました。
オチを付ける所とは言え最後の最後で物語の勢いが落ちたというか、ある意味拍子抜けしてしまったとか凄く説明し辛いんですがまあそんな感じがしました。
別に物語全体から見れば、なんら問題はないんですけどね。
■ というわけで
星4.5です。次回にも期待します。
ミステリーが苦手な方にもオススメかもしれない。