Xの魔王

Xの魔王 (MF文庫J い 1-6)

Xの魔王 (MF文庫J い 1-6)

 なんとなく設定が面白そうなので買って読んでみたのだが、なんというか・・・・・・切ない(色んな意味で)、そして酷い(色んな意味で)。

■ ストーリー
 封印されし魔王ミトラスが復活した時代。勇者アティスは魔王の城に単身乗り込み、『盾の聖女』と謳われるフェシナス王国カルセ王女は、彼を守るため城外での戦いに挑む。しかし彼女が見守る中、閃光とともに城は崩壊。勇者と魔王は姿を消した――。

 それから一年後。ふたたび平和が戻った世界で、カルセ王女は勇者アティスの姿を見たという情報を耳にする。その真偽を確かめるべく一人旅立ったカルセは、ついにアティスと再開した。しかし彼女の様子はどこかおかしい。その瞳に輝く銀光の十字は、魔王の証そのものだった。

 魔王×王女×勇者が織り成す《本格ファンタジー》←ココ重要

 あらすじの引用を私が躊躇う筈もなかった。だって・・・・・・だって・・・・・・

■ 忠告します
 どう考えてもこの感想は地雷です。

 私主観からの非常に勝手な発言が炸裂しております。

 この作品を未読了でネタバレを避けたい方は引き返すことをオススメします。

 核融合をする程度の能力を持った八咫烏さん並にWarningが出てます。

■ というわけで
 忠告はしましたので、見たい方はもう止めません。どうぞ存分にご堪能下さい。

■ 簡潔に言ってしまうと
 すべてが終わってるとしか言いようがないなぁ。

 特に設定負け&内容が酷い。

 こんなありふれた設定で設定負けってどういうことだよと思うかもしれませんが、そうとしか言いようがないです。

 内容が酷いというのは、設定を生かしきれていないことの表れと構成の酷さだと思います。

 じゃあ、どこがどういう風に酷いのかを見ていこうかと思います。

■ 例えば
 まずは『設定負け』からいこうかと思います。

 後に記述しますが、辛うじて唯一良かったといえる点と関わっています。

 とりあえずは『設定負け』のみの部分で見ると言える事は唯一つ、キャラクターと世界が合っていない。

 私主観の意見で申し訳ないとは思いますが、どう考えても現代のラブコメで出すべきキャラクターが出てきていると感じるのです。

 それが『本格ファンタジー(笑)』な世界に入り込んでいるのですから、演劇でもやってんのかと思いました。

 それは血が出ているシーンのはずなのに、それは悲しい場面のであるはずなのに、血の臭いも悲しみも伝わってこず、ありのまま起こった現象がこっちに伝わっているような感じです。

 横暴な悪代官風のキャラクターが出てきたときはもう目を点にするしかなかった。最高に笑えるシーンだったと思います。

 うん、どう読み返しても少なくとも本格ファンタジーとは合わないと断じて言える。*1

■ 次に
 『内容が酷い』について。ざっくばらんに言ってしまうと、

  • ストーリーの流れが酷い(コレが一番酷い)。
  • 話自体も酷い。
  • キャラクターの心情を上手く汲み取れない。
  • オチが秀逸すぎて目が点になる。

 他にも色々あったような気がしますがもういいです。

■ ストーリーの流れが酷い
 話の展開のスピードが意味不明すぎます。

 私が120ページ目程まで読み進めた時、ストーリーの流れ的にこの本はどう少なく見積もっても300ページ以上はあるんだろうなと思ってふとこの作品のページ数を見てみると262ページだった。

 もうこの時点で嫌な予感はひしひし漂っていたんですが、そのまま読み進めていると130ページ手前で鈍い動きを見せていた物語が急速に動き始めて嫌な予感モードが的中していることに気付いたものの、そのまま読み進めた結果クライマックス手前まで凄まじい速度で進んだの見て溜息をついてしまったのは秘密にしときたい。

 まあその後は落ち着いたんで良かったとは思いましたが・・・・・・300ページ以上を見込んで書いていれば少しは変わったかもしれませんね(多分)。

■ 話自体も酷い
 ・・・・・・これを語っていると日が暮れる気がする。

 引用すら書く気が起こらない。もう全てが滑稽だと言うしか・・・・・・

 超展開&決まりきったなりゆき展開を見守るのが精一杯でした。

 無意味にエロい部分とか、魔王に対するやられ役とか、さっき言った滑稽な悪代官とか唐突に登場する勇者(設定上仕方なかったんですが)とか・・・・・・突っ込めばいくらでも多分出てきますね。

 特に絶対勇者の設定は変えたほうが良かったと思います。あれでは・・・・・・主役を張れない。

■ オチ
 あそこまでやってバッドエンドはないだろう常考

 虚しさが溢れただけのような。

■ 唯一辛うじて良かったといえるかもしれない点
 これが逆にこの作品にとどめをさしているといっても過言ではないと思います。

 一応何が辛うじて良かったかを言っておくと、それは一部のキャラクター・・・・・・厳密に言えば一部のキャラクターの性格かな?*2

 これまたありふれた設定のキャラクターたちが出てくるんですが、彼ら自身は生き生きしていたと思います。*3

 ただ、それが物語に生かしきれていない。物語と噛み合っていない。そして役者根性がマックス。

 最後の魔王だけはかっこよかったような気もしますが、本当にそれぐらいだなぁ。でも、物語とは合ってない。

■ 評価としては
 読みきったので星1つ。一番盛り上がるはずのクライマックスシーンをここまで斜め読みしてしまったのは久しぶりかもしれない。

 ・・・・・・もういっそのこと地雷のタグでも作ろうかと考えた今日この頃でした。

*1:まあ、そもそも本格ファンタジーでは決してないと思う。

*2:べた褒めするほど良くもない。多分。

*3:この作品全体の評価からすると、です。