アイゼンフリューゲル

アイゼンフリューゲル (ガガガ文庫)

アイゼンフリューゲル (ガガガ文庫)

 読んだのは随分前の話だったりする。

■ ストーリー
 空を飛ぶ一機の飛行機。

 高速レシプロ機エトリピカと呼ばれるその機体を駆る青年カール・シュニッツは、その前を飛ぶ三体の龍と争おうとしていた。

 しかし、それはお互いがお互いを殺しあう争いでは決してない。

 彼らの目的はただ一つ。誰が何よりも早く飛べるのか。ただそれだけ。

 霞龍<ネーベルドラッへ>と呼ばれる種の龍たちは、カールの挑戦を受けるように我先にと前に出ようとする――

 これより綴られるのは、今はもう過ぎ去った追憶。竜の翼に神秘があった頃の物語。

 遥かな神々の領域を目指した、挑戦者たちの記録である。

■ 存在意義
 龍と戦い傷つけあうのではなく、競争し合うこと。

 普通ラノベとかで龍と人間が対峙したら、シリアスな物語なら戦う(命を奪い合う)とか圧倒的な生存的恐怖に襲われ一方的に蹂躙されるかとか畏敬を覚えるとかのイメージが浮かび易いですからね。

 そう考えると、人間と龍の争いが速さを競い合うなんてロマンがありますね。

■ ただまあ
 何というかこの物語の龍はどう見ても人間の命を生きるために奪うようには見えないので、純粋に彼らがどうやって生きているのかが気になりますね。何を食べて生きているのやら。

 高潔すぎる人外の生き物ってなんか素敵に見えて困る。

■ しかし
 人間同士は決して高潔ではいられません。

 空を飛ぶ飛行機はただ速さを争うものではなく戦争の道具と成り果てる。

 彼らとの交流は戦争の面において、何一つ役に立たず、彼らも関わっていないのです。

 純粋に速さを、何にも束縛されずただ空を飛びたいと願うカールにとっては苦痛以外の何物でもないのです。

 それを開発する者にとっても、戦争から離れられないことが何とも言えず辛いです。

 平和利用を考えたものが兵器に変わる瞬間って・・・・・・とても切ないですね。

■ こうしてみると
 人の醜さと龍の高潔さがあまりにも対比されているのがわかって悲しい。

 ・・・・・・本当は龍にも龍の醜さがあるのかもしれませんけどね。

■ そして
 カールの過去と未来への絶望。

 開発チームの無意味な抗い。

 この世界の希望はどこへ――

■ 評価としては
 いい所で次巻に続きやがったので星4つ。

 でも、次が楽しみだ。