いつも心に剣を(1)

いつも心に剣を 1 (MF文庫J し 5-1)

いつも心に剣を 1 (MF文庫J し 5-1)

■ ストーリー
 魔女が存在し、恐れられた時代。

 古い木の立ち並ぶ森を二人組みの旅人が通り抜けていた。

 一人は少年。名をレーレといい、純朴で真っ直ぐな曇りを知らない鷹のように鋭い瞳を持った強く優しい少年。

 ユユに従い、ユユを守る強さを持つ。

 一人は少女。名をユユといい、無垢でありながら深い思慮を覗かせるがわがままな少女。

 レーレを想い、レーレを守る知性を持つ。

 二人は崖下に降り、しばらく歩いた先に洞窟を見つけた。

 レーレからすればさっさと次の町に向かいたかったのだが、ユユが訊かずに洞窟に入ろうと言い出した。

 仕方なくその洞窟に二人で入ろうとするのだが、その洞窟はかなり怪しかった。

 入る前から猛烈な異臭を発し、さらには穴の表面を蔦が覆っていたのだ。

 中には男女と思われる遺体が寄り添っていて、狼の死骸がそれを守るかのように覆っていた。

 その男女の指には美しい金の指輪がはめられていたのだが、何を思ったのかレーレはそれを外して貰ってしまう。

 それが苦難の始まりであることにも気付かずに。

■ 魔女
 人から恐れられる、人であって人でない存在。

 『転んだ』者の名称とされる。

 魔のものを従え、『魔王』に付き従う。

■ 星の鎖
 音に聞こえる魔女討伐隊の集団。

 人々のために魔女を狩る。

 どんな手段を用いてでも。

■ この物語は
 『心』を映す物語だと思います。

 『心』を定義付ける言葉はありませんが、これ以外にこの物語を表すものはないと思います。

 口に出さなければ伝わらず、口に出しても伝わらない。口に出さずともわかり、口に出してもわからないこともある。

 欲にまみれて奪い合い、互いを想って愛し合い、人を陥れようと画策し、守るものを守るために戦う。

 人、魔女、そして魔物。見た目が変わっても、『心』の存在は絶対的で何一つ変わらない。

 醜く、愚かで、狡猾で、残酷で、優しい。

 それだけは何も変わらないものだと言っているようでした。

■ だから
 人と魔女が争い合うことは、人と人が争い合うことと何も変わらない。

 人と人が仲良く遊ぶことは、魔物と魔物が仲良く遊ぶことと何も変わらない。

 それは『心』が絶対的であることの証明。

■ 評価として
 星4つ。あまり多くを語らない方が吉。というか語れないだけなんですが。

 何故星4つなのかと言うと、この物語にそぐわないとは思うのですが、なにか物凄く大きな山があったら面白かったかなぁと思ったからです。

 何と言うか、現実に踏み止まっていてまだ越えていない感覚を残念に思っているのかもしれません。

 ・・・・・・無理な注文か。自分で言っておいてなんですが、バカなことを言ってる気がしてきました。