ミミズクと夜の王

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

 幸運にも古本屋で発見し即買い。第13回電撃小説大賞大賞受賞作。紅玉いづきが送る最初の『人喰い』の物語。

■ ストーリー
 夜の森と呼ばれる魔物の住む森に一人の少女が迷い込んだ。

 粗末な服、痩せ細った傷だらけの体、両手足に付いた鎖、額には『332』の刻印が痛々しく張り付いていた。

 自らをミミズクと称する少女は、ただある願いを叶える為にこの森を訪れていた。

 そして夜の森に住む夜の王に会い、彼女は言うのだ。

 「あたしを、食べてくれませんかぁ」

 それは何も無い絶望からさらなる絶望を重ねた少女と夜の森の主である美しい夜の王の物語の始まりだった。

■ 一言で称するなら
 それはまるで挿絵の無い童話を読んでいるような感じがした。

 進まず、止まらず、動かず。ぼんやりとした時間が流れていく。

 頑なな夜の王と絶望的なまでに喜びを欠落したミミズクの交わりはどうしようもなく拙い。

 考えるのではなく感覚的に動くミミズクと人間嫌いの夜の王が過ごす変わらない無為な時間。

 でもそれは、やがて意味のある時間へと変わってゆく。

■ 人は
 どうしようもなく醜い。

 美しいものはあまりに数少ない。

 望んで醜くなるものはあっても、望んで美しくなるものは無かった。

 それは世界の全てだった。

■ 読んでいると
 心が洗われる感じがしましたね。

 ミミズクと夜の王のやりとりを見ていると胸が一杯になります。

 それは手を伸ばしても届かない世界だなと思いました。

■ なんかこう
 幼稚園児に読み聞かせてあげたいような衝動に囚われそうになります。

 物凄く長くて大変ですが、なんか上手いこと簡略化すれば十分読み聞かせられる童話になれる気がします。

 誰か、頑張って編集するんだ(無茶言うな)。

■ 評価として
 星5つ。終盤の展開はなんとなく読めていてもやっぱり綺麗なものは綺麗だった。いい作品でした。

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