剣の女王と烙印の仔(1)
- 作者: 杉井光,夕仁
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2009/04
- メディア: 文庫
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■ ストーリー
疫病神。災いの獣。そして《星喰らい》と称される存在が戦の場において存在していた。
その異名は十数回に及ぶどのような潜入作戦に出ても必ず勝利し、そして例外なくいつもただ一人生き残ることからついた畏怖の象徴だった。
そうして《星喰らい》クリストフォロ――クリスは如何な危機的状況に陥っても生き延びてしまっていた。
その身に宿した額と両手の甲にある獣の烙印は新月の夜に最大限の力を発揮し、周りの全ての命運を喰らってクリスに死ぬことを赦さなかった。
生きる目的も死ぬ目的も無く、まるで生を、命運を喰らうためだけに生きているようだった。
そして彼が生まれ落ちて二百度目となる新月の夜もまた死地を彷徨っていた。
絶体絶命であるはずの死地でもやはり彼は生き延び、まるで命運を喰い足りない獣に導かれるようにさらなる死地へと足を向けた。
そして彼は出逢うことになる。自分と同じように《戦場に塩撒く死神》と呼ばれ畏怖される存在を。
その姿を見ただけで呪われ、死に至るとされる、最も忌むべき存在。
それは身の丈を超えるような大剣を振るい、甲冑は一切纏わず白い衣だけを身に帯び、燃えるような赤い髪を棚引かせる見目麗しい少女だった。
彼女の戦いはあまりにも美しく、そしてあまりにもありえない戦いだった。
まるでわかっているかのように全ての攻撃を避け、その尋常でない大剣で全てを薙ぎ払い、返り血の付いた顔は恐ろしい程に麗しかった。
そしてクリスと《戦場に塩撒く死神》――ミネルヴァは対峙する。
「おまえが、わたしを殺す者か」
そう言われ驚きを禁じえないクリスを、ミネルヴァは憎しみを込めて見つめる。
内なる獣の命運を喰らうことの終わりを諦観するクリスと、未来視で見た死を避けるために彼を殺そうとするミネルヴァ。
衝突すればどちらかの命が失われることは明らかだった。そのはずだった。
しかし、その衝突はどちらも望まない方向に転がることになる。
■ 普通に
面白かったんですが、ハイ。ヤヴァイ位モリモリ興奮しましたよ。
戦いも、存在も、運命も全ての要素が上手いこと絡まってどんどん転がってゆきます。
■ クリスとミネルヴァ
同じ畏怖される存在でありながら、その在り方は全くの真逆。
クリスは命を喰らう――運命に流され死を招く存在。
ミネルヴァは死を視る――運命に抗い死を避ける存在。
生きるために、そして死ぬために。彼らは何を望むのだろうか。
■ 烙印
生まれ落ちたその時からすでに確定した戒めであり証。
それは聖なる者の証明となりながら、穢れた者の証にもなる。
■ 聖王家
聖王国の頂点。聖なるものと崇められつつも、目に見えない偽りに塗れた政の場。
救われぬ女王が住まう場所。
その儚き女王の目に映るものは。
■ 何者も
争いながら、傷つきながら望むものを得るために進む。望まない運命があるならば――
「そんな運命は、僕が喰らってやる」
彼が望むものは・・・・・
■ う〜ん
世界観とかは好きなんですが、もうちょっと世界の描写が欲しいかも。
行く先々で必要な分だけ引き出されも、理解し辛いですしね。
やっぱり、この世界は一つの何かに収まっているという感覚が欲しいと思うのは私だけでしょうか?
■ 評価としては
今後の期待も込めて星4.5です。さよならピアノソナタが終わって寂しく思っていましたが、また楽しめるシリーズが始まって何よりです。
今後が楽しみですね。
■ どうでもいいんですが
どうして結構活躍しているニコロのイラストが無いんだ。あれだけ出番があるならカラーイラストに登場してもいいくらいなのに。残念です。