ピクシー・ワークス
- 作者: 南井大介,バーニア600
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2009/09/10
- メディア: 文庫
- 購入: 23人 クリック: 382回
- この商品を含むブログ (57件) を見る
■ ストーリー
環太平洋戦争と呼ばれる世界大戦が終わったあとの世界。
私立笹島明桜高校は世界的な多国籍企業の天城グループを母体としており、成績上位の特待生には学費免除、進学援助などの好待遇があり高校編入組による優秀な頭脳が集まっていた。
そんな編入組たちがこの高校を進学校としているのだが、いつも成績トップにいるのは意外にも生え抜き組のとある2人だった。
和風な美少女の葛城奈緒子。
『メガネっ子は文学少女か大人しめの女の子』という男子の淡い幻想を打ち砕くメガネっ子である片桐千鶴。
そして編入組の神楽木芹香を合わせて『笹島明桜のイルミナティ*1』という名の天文部に所属していた。
何故そんな風に呼ばれているのかと言うと、この3人組が科学部もビックリの科学偏愛者《サイエンスホリック》だからだ。その業績は指導教諭のブラックリストから消えることがないほどに大きかった。
そんな3人組に芹花の幼馴染であり生徒会会計である萩原蓮から、脅しという名の取引(もとい依頼)を持ちかけられた。
それが3人組と『彼女』との出逢いだった。共に空を目指すための。
■ うん
この3人組はヤヴァイ(危ない人的な意味で)。
この3人組を端的に説明してる文が真面目に書いてあるのに笑える。
千鶴はルールを軽視する。芹香はルールを曲げる。奈緒子はルールを利用して無茶をする。
まともなヤツがいません。それでいて、
三人は知的好奇心と知的冒険を追及する傾向が強く、法を犯すことさえ躊躇しない。
見事にここの息がピッタリ揃っているという見事な愉快犯的悪党っぷりだと関心します。
■ しかし
彼女たちの基本スペックは同年代の人間に比べ圧倒的に高く、その知識量は脅威と言えるほどです。
さらに彼女たちは技術者としてそれぞれがそれぞれの分野に特化しているのです。
生まれ持った環境によりメカニック、エンジニアとして知識が豊富な奈緒子。
マッドサイエンティストに相応しいひらめきを魅せる千鶴。
そしてあらゆる乗り物に精通し、さまざまな運転資格を持つ芹香。
そんな彼女たちの開発の姿勢は素晴らしいものがあります。
何せ『お金<技術資料』なところが凄い。どう考えても女子高生じゃない。
それは、彼女たちの御付きとして当てられた生徒会副会長の遠藤由衣の一般人反応を見れば一目瞭然。
「ひゃ、ひゃくまんっ?」(由衣)
「せっかくですが、私に報酬は結構です。代わりに全ての資料とデータのコピーを頂きたい」(千鶴)
「あたしも金よりそっちの方がいいなあ。滅多に手に入らないデータだし」(芹香)
「そうね。お金なら株とかで手に入るし。資料の方が良いわ」(奈緒子)
依頼者からの依頼料である100万を見事にスルー出来るこの3人は間違いなくサイエンスホリックですなぁ。
女子高生で100万は凄い大金なのに・・・・・・
■ そして
『彼女』ことヴァルトローテも素晴らしくぶっとんだAIです。『彼女』扱いなのは女性型のAIだからです。
そのぶっとび具合はアシモフのロボット三原則なんか完全に無視して向かうところ敵なしですね。
たった一行で見事に見事に粉砕してくれています。
ちなみに第三原則*5は、見事に冒頭で粉砕してくれています。なにせ、
なぜ空で死ねなかったのか、と。
自らの死を後悔してる時点で既に自分を省みていませんね。
■ 自我を持つAI
彼女が何故自我を持ったのかは記されていませんが、自我を持って人間に近づいたがゆえにこんな思考が出来るのでしょうね。
その割に、AIの立場から人間に質問するので少し不思議な感じがします。
『しかし、あなた達人間は矛盾の塊ですね。命やモラルを尊重するのに命がけの娯楽を好んだり、戦争をしたりする。フレーム問題が生じたりしないのですか?』
こんな質問をする割に、優先順位を決め、無矛盾を克服しているその様はもはやAIではないと言えます。まあ、ぶっちゃけ戦闘用AIなんで当然といえば当然なのかもしれませんが何せ『自我』がありますからね。
人間に近づいたAIである『彼女』が本当に自分に望むものとは?
自分の本『心』に訊いた『彼女』が導き出した答えとは?
■ 評価としては
十分に楽しませていただきましたので星5つ。
登場人物がチートスペックすぎて多少の無理が全く気にならないのが凄いと思いました。恐るべし『笹島明桜のイルミナティ』とその仲間たち。
■ 紹介してませんが
こっそり百合っぽいシーンもあったり。女の子の戯れる姿が見ていて面白いから困る。
酒が入るとみんな人が変わりますね。ただでさえ酷いのに(褒め言葉)。