双竜記 機械じかけの竜と偽りの王子

機械じかけの竜と偽りの王子 (電撃文庫)

機械じかけの竜と偽りの王子 (電撃文庫)

■ ストーリー
 リュクサリア王国は隣国のオルガンドに攻め込まれていた。

 リュクサリア王国を守るために前線やってきた主人に付き従ってきた戦闘奴隷のイアンは、突然敵の奇襲に見舞われたのだ。

 暗闇に浮かぶ幾つもの異形。二本の腕に二本の足、頭部を持っているという点で人間に良くているが、背丈は優に倍を超え、全身が鎧のような装甲で覆われており、その体内には筋肉と血液の代わりに無数の部品からなる精巧な機械式の機構が詰まっているそれは、機械じかけの巨大な兵士だった。

 機功鎧《アームネイン》と一般に称されるそれは、胴体にある部分に乗り込んだ操縦者の意思に応じて稼動する戦争兵器だ。

 突然の奇襲に焦り、リュクサリア側も機功鎧に乗り込み対応しようとしたものの敵の圧倒的な戦力に敗れ去ってしまう。

 イアンはなんとか戦場から離れることが出来たものの、主人が死んでどうしていいかわからくなり途方に暮れていた。

 当ても無く森の中を彷徨っていると、突然彼の目の前に機功鎧が崖から滑り落ちてきた。

 そして搭乗部分が開くとそこには、この戦場に似つかわしくない美しい少女がいた。

 彼女は何かを言いかけて気を失い、どうしたものかと考えていると、彼女の乗っていた機功鎧の搭乗席に何かがあることに気付いた。

 それは、小鳥の卵程度の大きさの角ばった形の石に、金属製の鎖がくくり付けられたペンダントだった。

 彼女の持ち物なのかと考えていると、オルガンドの機功鎧が近づいていることに気付いた。

 そこで彼女が追われていることにようやく気付いたのだが、彼女を助けようにも手段が無い。

 途方に暮れかけたそのとき、目の前にある機功鎧が搭乗者がいないにもかかわらず動いたのだ。

 機功鎧の操縦の仕方なんてわからない。でも、彼は決断した。機功鎧に乗る事を。

 その決断がすべての始まりだった。

■ っていうか
 ストーリー長いよ、って自分にツッコミを入れたくなった今日この頃。

 まだまだ未熟ですみません。もうちょっと上手くまとめられたらいいと思うんですが・・・・・・

■ それはそれとして
 電撃文庫には珍しい、純正ファンタジーの香りがぷんぷんする作品ですね。

 雰囲気のあるイラストと、結構固目の印象を受ける文章によって、バッチリ純正ファンタジーの空気が出ています。

 この空気、凄く好きです。

■ それにしても
 主人公らしからぬイアンは凄くキャラが立ってますね。

 普通、ファンタジーの主人公って何かしらの前向きな考え方があると思うんですが、イアンにはそういうものは一切有りません。

 自分が見たことも無い想像を超える世界に突然放り込まれ、重大な責を負うことになります。

 ・・・・・・でも、私でもそんな立場に立たされたら普通に不安にしかなりませんから、非常に人間味があっていいですね。

 でも、もうちょっと頑張れよとも思ったり。人の心は複雑です。

■ あと
 王女のフランシスカ・リュクサリアも見事に王女と少女を足して2で割った王女の鑑みたいな人ですね。

 王女として振る舞いを忘れず、それでいてイアンの前での振る舞いはとても年頃の少女らしく可愛らしいですね。

 また彼女のそばに寄り添うように存在する侍従のミリアムも素敵な女性ですね。

 彼女も侍従の鑑というに相応しい態度をこなします。

 王女を想い、彼女の幸せのために行動する様はまさに侍従。かっこいいですね。

 かっこいいという表現はおかしく見えるかもしれませんが、読めばわかります。

■ 戦争
 戦争模様も面白いですね。

 味方の裏切りにあったり、味方同士で言い争ったり、意見を考えながらも自分の持っていきたい方向へ進めようとするなど、人間味があって非常に面白いです。

■ 戦い
 正直な所、機械兵士に乗り込んで戦うってどんなもんだろうと想像してみたんですが、別にそれがファンタジーの空気を損なっていないと感じるのが不思議ですね。

 イアンが敵方と一騎打ちするシーンがあるんですが、そこを見るとなんとなく納得出来る気がします。

 静謐というか、機功鎧に乗り込んで戦っているはずなのに、普通に生身同士で戦っていると言うか、一体感があるからと言うか。

 ・・・・・・うん、もやもやとしてハッキリしないな。なぜだろう?

■ というわけで
 評価としては星4つ。戦争、盛り上げ所はきっちり抑えてありますが、あとは純正ファンタジーらしい心が洗われるシーンとか幻想的なシーンがあったらいいかもしれません。