悪夢 "the stalker"

■ よく
 私は悪夢を見る。

 それは死と恐怖に直結する夢。

 これはその中の一つ。

■ ストーカー
 意味もわからず場所もわからず彷徨い続ける。

 どこを見ても世界に色はなく、どこに行っても何もない。

 私は逃げている。怯えて震えている。

 誰かに追われている。

 誰かはわからない。姿が見えない。人なのかもわからない。

 自分でもよくわからない何処かに隠れる。

 わからないのにそこは私の家に似ている気がした。

 自分の部屋に逃げ、震えて蹲っていると突然外から何かが入ってくる。

 そう、バイオハザードと呼ばれるゲームで見るような醜悪な怪物。

 人の形をしているけれど、どう見ても人ではない怪物。

 意識がこちらに向く。体が強張る。動けない。

 次の瞬間気が付けば、私は何故か複数の人がいる学校の教室のような所にいた。

 まわりには、やはり色のない人が沢山いて同時にあの醜悪な怪物が周りを取り囲んでいた。

 そして怪物たちは色のない人を喰らっていく。

 血も何も出ない。しかし、何故か悲鳴が響き渡る。わからない。恐怖の香りが私を心を強く蝕む。

 生存本能に従うように、怪物たちが色のない人を喰べている間に私は教室の外に出ようと必死で逃げようとする。

 扉を開け、外へ出ようとした瞬間――

 背中に恐怖の気配が走る。見なくてもわかる。すぐ背後にあの怪物がいる。

 次の瞬間――


 私は恐怖に喰われた気がした。


■ ふっと
 私は目覚める。汗も何も出ていない。

 またか――そう思うだけ。

 すぐにその印象は薄れ、悪夢の内容を忘れる。

 次の悪夢を見るまで思い出すことはない。

 それこそがまさに悪夢。そして、ただそれが繰り返されるだけ。